東京都青梅市の印鑑・はんこ専門店
2021.03.10
ハンコの知識篆刻に興味があるけど何が必要なのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
ここでは、篆刻に必要な道具をご紹介します。ご紹介する道具は、全て当店で購入することもできます。初心者でも使いやすい道具を適正な価格でご提供しています。
また、同じものを当店で開催している篆刻体験教室でも使用しています。当店の篆刻体験教室ではこれら全てをご用意していますので、手ぶらで参加できます。
篆刻体験教室のお申込み、篆刻の道具に関するお問い合わせは、ホームページの「お問い合わせ」、または電話(0428-22-4461)で。
合わせて、以下の投稿もご参考にしてください。
・篆刻体験教室Q&A
・落款印ってどういうもの?
・そもそも篆刻(てんこく)とは何?
※このページの写真は、全て当店にある実物です。
篆刻では主に石の印材を使用します。長さは50mm前後が持ちやすく扱いやすいでしょう。
印面は正方形で、 印面の大きさは一辺が10mm、12mm、15mm、18mm、21mm、24mmなど様々です。
(大きさの目安についてはこちらを参考にしてください。)
印面の幅が半分の長方形の石材もあります。(引首印などで使用します)
断面が変形の自然石も人気です。
石の種類も多種多様ありますが、当店の篆刻教室では青田石(せいでんせき)や巴林石(ぱりんせき)をよく使います。こちらもご覧ください。 →篆刻で使う石はどんな石?
自然石は、同じ形状が2つとありません。石との出会いも一期一会です。形状の面白さに合わせて間宮先生が面白く字入れしてくださいます。
普段の篆刻教室では使いませんが、印材の中には印の上部に飾りの彫刻が付いたものがあります。その飾りを鈕(ちゅう)といいます。国宝「金印」には、ヘビの鈕がついています。
当店には、十二支の動物の鈕が付いた印材が飾ってあります。
当店で一番大きなものは、高さ160mm、幅80mmの獅子の印材です。
石の印材を固定するために使用します。印床(いんしょう)とも言います。
ねじ式とくさび式があります。ねじ式はねじを回して固定します。くさび式はくさびを強く押し込んで固定します。ねじ式のほうが扱いが簡単です。当店の篆刻教室ではねじ式の篆刻台を使っています。
挟む木の枚数を調整して、印材の大きさに合わせて挟みます。 印材の大きさによっては、大きな篆刻台を使うこともあります。印材を挟んだときに5~10mm程度上に印面が出るくらいを目安に印材をはさみます。これは自分の彫りやすい高さに調節して構いません。
市販のもので安価なものは、しっかり固定できないことがあります。固定が甘いと、印材がずれて字を削ってしまったり、指をケガする原因にもなりますので、ご注意ください。
なお、篆刻台を使わずに石の印材を直接手で握って、彫る方法もありますが、初心者向きではありません。
篆刻で使用する彫刻刀のことを鉄筆と言います。当店の篆刻教室で使っている鉄筆は先端が平らで両刃になっています。刃の角を使って石を彫っていきます。先端が斜めに研がれている鉄筆もあります。
市販されている物は刃の幅が、細いものから広いものまでさまざまですが、細いものは軽すぎ、太いものは重すぎて、どちらも初心者向きではありません。当店の篆刻教室では一番使いやすい6mm幅の鉄筆を使っています。
また安価な鉄筆の中には、使っていると刃が欠けたり、すぐに擦り減って彫りにくくなってしまうものがります。しっかりと焼きを入れてあるものが良いでしょう。
意外に思われますが 、歯ブラシは必需品です。石を鉄筆で彫っていると、彫りくずが出てきます。そのままにしていると彫っている印面が見えにくくなるので、適宜、歯ブラシで彫りくずを掃います。
また、印を押すときは、彫りくずを歯ブラシで良くとってから印泥を付けないときれいに写らないだけでなく、彫りくずが混ざって印泥の品質が低下します。
一般に売られている安い歯ブラシで構いません。
彫った印を紙にうつすために使用します。一般の朱肉とは異なり、主原料は、 朱砂(しゅさ)という鉱物 、もぐさ、ひまし油が使われています。
朱砂を細かくすりつぶして、ひまし油を混ぜてよく練り合わせます。いくつかの添加物を入れてよく混ぜたものをもぐさにしみこませます。
もぐさ? そう、お灸で使われるもぐさです。
安い印泥には朱砂でなく人工顔料が主原料として使われている物があります。
印泥はほとんどが中国で作られています(日本製のものは「練り朱肉」と呼ばれます)。実は、中国製印泥は、その製法や成分が門外不出で正確にはわからないものが多いのです。添加物の量や組み合わせによって色の微妙な違いが出てきます。
色の種類としては、次の3種類が有名です。そのほかの色もあり、メーカーによって呼び方が異なるものもあります。
・箭鏃(せんぞく)‥ 鮮やかな朱色で、漢字・かな両方に合う
・光明(こうみょう)‥明るい朱色で、漢字・かな両方に合う
・美麗(びれい)‥ 濃い朱色で、漢字作品に合う
このように作品との相性がありますが、全体のバランスを考えて好きな色を使って構いません。
印泥のサイズは、使う印材の大きさに合わせて、それより大きめの内径のものを用意すると良いでしょう。
印泥の単位は「両」(約30g) です。
1/2両装(約15g)内径は約4.5cm
1両装(約30g) 内径は約5cm
2両装(約60g) 内径は約6.5cm
5両装(約150g) 内径は約8.8cm など。
中国のメーカーとしては 「上海西冷印社」が有名です。(「冷」の正しい字は「さんずい」)
当店の篆刻教室では、日本製のお手頃なシヤチハタ印肉公用を使用しています。この印肉はインクが薄くなったら「朱の油」を追加して、補充することができます。
日本では、「株式会社モリヤマ」の「日光印」「雅印色四季」「吉祥寶」、「株式会社丸山工業」の「永吉斎」「國華瑞色」「金龍印色」「特級印色」「パンダ印色」、「シヤチハタ株式会社」の「鯱旗印肉」などがあります。当店には、中国製印泥や日本製朱肉のほか、南部鉄器の朱肉など様々な印泥・朱肉を展示しています。見ているだけでも楽しいですよ。
書や水墨画などに落款印として捺印する場合は、必ず印泥を使います。油性なので長期間たっても変色・退色せず、水にぬれてもにじまないからです。
しかし個人的な趣味で捺印したり、ハガキに押したりする場合は、一般の朱肉やカラーのスタンプ台でも良いでしょう。
なお、安い印泥も売られていますが、印影がきれいに写らないことがありますのでお気を付けください。かと言って高ければ良いとは限りません。最初は2,000~3,000円くらいのものが良いでしょう。
印泥については、これだけで一項目作れるくらい奥が深いのですが、これくらいにしておこうと思います。
彫った印を紙に押すときに下敷きとして使用します。一般的なはんこの場合、印マットを敷きます。書に落款印を押す場合は、印褥(いんじょく)と呼ぶ印台を敷きます。印台は表面が布や人工皮革のものが多いようです。
当店の篆刻教室では、印台として「逆バレン」を使用しています。表面は竹の皮です。 後述する「印箋」や和紙、半紙など薄い紙に印を押すときにはあると便利です。
版画などでは、版木を下にして、その上に紙を置き、紙の上からバレンでこすります。ところが篆刻では、バレンを一番下に置き、その上に紙を置き、上から印を押します。このため一般とは使い方が逆なので「逆バレン」「バレン台」と呼んでいます。
紙に印影を写すとき、印材と紙を一緒に滑らせるように動かします。バレンの上で「の」の字を書くように軽く4~5回こすると、きれいに印を捺すことができます。ただし、ハガキや色紙などの厚い紙、書道や絵画など大きな作品に押すときなどのようにバレンが使えない場合もあります。
篆刻家にはガラス板を使っている人もいますが割れる心配があります。初心者はバレンのほうがきれいに押せると思います。きれいな印影を残すためには、印泥の付け方や押印の力加減が難しく、押印はプロでも気を使う工程です。
完成した篆刻印の印影を残しておくための展示用の和紙を印箋と呼びます。
印箋にも大きさや形、印刷が色々ありますが、当店の篆刻教室では18cm×7.5cm の印箋を使っています。
篆刻の一番最初の工程では、トクサ板を使って石材の印面を平らに削ります( 作業工程に関してはこちらを参照)。天然の石材は平らでないことが多いので、必ずトクサ板で平らにします。
印面が平らに削られていないと、捺したときにきれいに写すことができません。削る作業は簡単そうですが、きれいに平らに削るのは意外と難しいのです。
また、彫っている途中で修正したくなった時には、もう一度トクサ板で印面を削ってやり直すこともできます。
昔は、トクサという植物を乾燥させて板に貼って使用していたのですが、今はそれに似せた紙やすりを板に貼ったものが販売されています。(天然のトクサの粗さは、聞くところによると1000番程度だそうです)
ある程度使用すると目が詰まってくるのですが(上記写真を参照)、目が詰まったトクサ板は仕上げの時に面を磨くのに使うので捨てません。
トクサ板のかわりに、耐水ペーパーで代用することもできます。粗削り、仕上げなどのために3~4種類あると便利です(P180、P400、P800、P1200くらい:番号が大きいほど目が細かい)。耐水ペーパーを平らな板に糊付けして使うと扱いやすいです。必ず平らな板の上で使用してください。そうしないと印面を平らにできません。大きさは上記のトクサ板程度(110x47mm)が扱いやすいです。
トクサ板を使って石材の印面を平らに削ったのち、その面全体に朱墨を塗ります。次に印面に墨で鏡文字を書き入れます。これを「字入れ」といいます。
朱墨・墨は液体の墨汁ではなく、硯で墨をすって使用します。石面に定着しにくいからです。
これらの道具は、特別なものではなく、一般に販売されている物で十分です。
この「字入れ」の工程は、篆刻作品の品質の7~8割を決めると言っても過言ではないほどの重要な作業で、鏡文字を書き入れる熟練の技が要求されます。
当店の篆刻体験教室では、初めは間宮先生が字入れをしてくださるので、参加される生徒さんは、心配する必要はありません。何度か練習して慣れてきたら自分で字入れに挑戦すると良いでしょう。
墨を使って「字入れ」する以外に、自分で書いた絵や文字の図案を印面に移す方法があります。
トナー式のコピー機を利用して自分で書いた絵や文字を縮小して、それを裏返して印面に写すことができます。他にトレーシングペーパーや雁皮紙(がんぴし)を利用する方法もあります。詳しくは篆刻教室で実演をご覧ください。
書きたい文字を決めたら、篆書体の字形を調べるために漢字字典が必要です。
字典には、篆書体の様々な字形が掲載されています。その中から好きな字形を決めて、印材の印面に墨で「字入れ」を行います。
ただし、普通の漢字字典には篆書体の字形は載ってないことが多いので、専門の字典が必要となります。最近はインターネットで調べることもできます。
写真の「新常用漢字印章字林」(全日本印章業協会刊行)が手ごろです。市販されていませんが、当店で購入できます。
【参考】そのほかに篆書体や古文・金石文(※)を調べるのに役に立つ字典としては「篆刻字林」(服部耕石著、三圭社)があります。
漢字の成り立ちや、元々どのような意味だったのか、などを調べるときは「字統」(白川静著、平凡社)がとても詳しく、参考になります。
そのほか、二字や四字の良い言葉をさがすのに役立つ「墨場必携(ぼくじょうひっけい)」、篆書体以外の字形を調べるのには「五體字鑑(ごたいじかん)」も必要に応じて参考にすると良いでしょう。
これらの本は高価なので図書館でご覧いただいても良いと思います。
ネットでは、旧版ですが「篆刻字林」( 服部耕石著、資文堂、1927)、「五體字類(昭和12年増補11版)」(法書会編、西東書房、1937)をデジタルブックで無料で見ることができます。
(※)金石文とは、古代中国の時代に、青銅器や石に刻まれた文章のことを指します。
この道具は、当店の篆刻体験教室では使いません。(ご希望があれば販売いたします)
印矩は、最後に押印するときに印の位置を固定するために使う定規です。L字型とT字型があります。
展覧会用の作品などに落款印を押す際に、狙った位置に曲がらないように捺すために印矩を使用します。更に、一度できれいに押せなかったときには、印矩をそのままにしておくと、もう一度同じ場所に重ね押しができます。失敗できない本番用の落款印を押すときにはあると便利でしょう。
材料は、黒檀、紫檀、透明なプラスチックなどがあります。印台と印矩に磁石が付いていて、捺したときにずれにくくなっている物もあります。
当店の篆刻教室では教科書(テキスト)を使った座学をしていません。まずは彫る楽しさを感じて欲しいので、理屈は後回しにしています。しかし自分でも学んでみたいという方のためには次の本をお勧めします。
「新版 篆刻の実習」(蓑毛正雄著、教育図書)(B5サイズ、48ページ)
300円程度のお手頃なテキストです。ご希望の方は当店までお問い合わせください。
実際の篆刻体験教室では、このテキストと異なる部分もあります。篆刻はこうでなければならない、というルールに縛られることなく、自由に楽しんでほしいと思います。
篆刻体験教室に参加してみたい方は、 ホームページの「お問い合わせ」、または電話(0428-22-4461)でお申込み・お問い合わせください。
1回だけの参加でもOKですし、何度でも参加できます。(キャンセルは無料です)