東京都青梅市の印鑑・はんこ専門店
2020.10.21
その他「印章アドバイザー」ってご存じですか?
一般に、印章店の店頭でお客様に印章を販売する店員を印章アドバイザーと呼ぶ場合があります。それとは別に、本当に重要な「印章アドバイザー」という仕事があります。
「印鑑登録」をするはんこを実印と言います。この実印に彫られている文字にはさまざまな書体が使われているために、役所の登録窓口の担当者が判読できないことがあります。そんなときに判読のお手伝いをするはんこの専門家が「印章アドバイザー」です。
印鑑登録の際に窓口で、このハンコは登録できませんと断られることがあります。詳細な規定は市区町村ごとに条例で定められていますが、例えば大きさが規定外であったり、変形するようなゴム印は登録できません。
そして、重要なことは、本人の姓名(またはその一部)が彫られていなければなりません。自分の名前ではない他の名前のはんこを登録することは当然できません。そのために窓口ではその人の名前と一致するかどうかを見ています。
ところが、持ち込まれるはんこの中には、何と読んだら良いのかわからない、あるいはこんな漢字があるのだろうかと思うような変形した文字がたまにあります。印章店では実印をお作りする際には偽造防止の観点から篆書体や印相体(八方体)などをお勧めしますが、規定ではどのような書体でも構わないのです。そのため中には「素人が彫ったの?」と思うようなはんこも実際にあります。
そんなとき、役所の担当者にアドバイスをするのが「印章アドバイザー」です。
役所の担当者から電話やFAXで、印章専門店の「印章アドバイザー」に助言を求めます。アドバイザーは専門知識と経験からその部分が文字として読めるかどうかをアドバイスします。”これは正しい漢字ではありません”という場合、役所の担当者は印鑑登録を認めない可能性が高いでしょう。
アドバイザーは、問い合わせのある一部分の文字だけを切り取り見せられていて、印影全体を見ることはありません。また、あくまでもアドバイスをするにとどまり、登録できるかどうかは役所の判断です。
役所の窓口で「印鑑登録」のときに、役所の担当者が判読できない印影に対して、それを間違って登録して(あるいは拒否して)しまうといけないので、確かな技術を持った専門家・はんこ屋が紛らわしい文字を判読し、それに基づいて印鑑登録をしています。当店は平成7年(1995年)以来25年以上「印章アドバイザー」のボランディア活動をしています。
これは、当店店主が平成7年(1995年)に「印章アドバイザー」として委嘱を受けた時の委嘱状の写真です。店内を整理していて発見しました。それ以来25年以上、陰ながら皆さんの印鑑登録のお手伝いをしています。
※現在は公益社団法人「全日本印章業協会」が認定しています。
「印章アドバイザー」は日本の印鑑登録制度の信頼性を担保する重要な役割を担っています。そのため現在は、国家資格である印章彫刻技能士の資格を持っている必要があり、また15年以上の営業実績があることが条件とされています。
ただし、役所から当店に問い合わせがあるのは年間数件で、ほとんどのケースは窓口で受理されているものと思います。
なおこの「印章アドバイザー」は完全にボランティアで、報酬は一切受け取っていません。
また個人情報は伝えられず、印影の一部のみが送られてきて、この部分がこの漢字として判読可能かどうかという問い合わせだけがやり取りされます。
日本で印鑑登録が国民生活に根付いているのは、このような信頼性を保つための制度が確立していることも重要な要因となっています。