東京都青梅市の印鑑・はんこ専門店

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2023.02.23

その他

「令和」と「梅」の話

今日、令和5年(2023年)2月23日は天皇誕生日です。63歳おめでとうございます。
天皇陛下が即位されると元号が改まります。今から5年前、2019年に「令和」が始まりました。

この「令和」という年号は、「梅の花」と深ーい縁があるって、ご存じでしたか?

「令和」の出典は、万葉集です。万葉集には、天皇や皇族、歌人、一般庶民などの幅広い階層の人々が詠んだ和歌を収めてあり、歌は身分を問わないという考えから作られています。日本人の懐の深さを感じさせます。素晴らしいです。

その万葉集第5巻「梅花の歌」32首の序文です。原文は漢字だけの漢文体なのですが、分かり易い書き下し文を紹介します。
 初春(しょしゅん)の月(れいげつ)にして
 気(き)淑(よ)く風(かぜやわら)ぎ
 梅は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き
 蘭は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かお)らす
[意味]
「時あたかも新春の好き月(よきつき)、空気は美しく風はやわらかに、梅は美女の鏡の前に装う白粉(おしろい)のごとく白く咲き、蘭は身を飾った香(匂い袋)の如きかおりをただよわせている」
「萬葉集 全訳注 原文付」中西進, 昭和59年より。( )は筆者加筆。

詳しい解釈は専門家に任せるとして、この序文から「令」と「和」を抜き出したのが「令和」です。「令和」という熟語があるわけではなく、作った言葉だったんですね。今までの元号は中国古典からの引用が慣例だったのですが、今回は日本のオリジナル「万葉集」からの出典ということで話題になりました。

紅梅

この序文は春の花である「梅」と「蘭(藤袴)」をうたったものです。どうです?「令和」と「梅の花」の深ーい縁が分かりましたか。

藤袴

直接の関係はありませんが、青梅の人間としては、ちょっと嬉しく誇らしく思います。復活した吉野梅郷梅まつりにぜひお越しください。当店の「梅の小枝印」もよかったら見に来てください。冷やかし歓迎です。

ところでこのとき、ちまたでちょっと話題になったことがありました。
「令和」の「令」の漢字についてです。

上の写真は当時の菅(すが)内閣官房長官が「令和」を公表したときのものですが、「令」の漢字がおかしいのです。

発表時の「令」拡大図

問題となったのは、①と②の2か所です。まず、一般的な書体で「令和」がどのような形状なのか見てみましょう。

「令」の字に注目してみると、メイリオ、明朝体、遊ゴシック体は①が横棒で、②が縦棒です。教科書体、行書、楷書は①が点で、②も点(マ)です。他のどの書体を見てもこの2つの組み合わせ以外にはありません。小学校では教科書体の後者の書き方を子供たちに教えています。

ところが公表された「令和」の筆書きの字はこのいずれでもないのです。
①は点で、②は縦棒です(跳ねているのはトメの一種)。こんな書き方は正しくないじゃないか。日本の元号を公表するというのに政府が間違った漢字を書くとは何事だ!と一部から大変な抗議がありました。当時、少し話題になったのでご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

ところが、これに対する当時の文化庁の見解はまったく拍子抜け。
「令」の字の形については、正解や決まりはなく、形が多様な漢字の代表的なひとつだとしていて、平成28年に出された指針では、「字の形の違いは習慣によるもので、本来は問題にする必要がない。」
(NHKニュースより)

つまり、どちらの書き方でも間違いではないというのです。詳しくお知りになりたい方は文化庁の国語施策の「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」(平成28年)をご覧ください。(「令」は手書きでどう書きますか?」を参照)

みなさん、この見解に納得できますか? それなら、小学校で漢字の書き取りでさんざん直されたのは一体何だったのでしょうか。モヤモヤするのは私だけでしょうか。

2023.3.9追記
印刷物で主に使われる明朝体は、手書き文書で主に使われる楷書体とは細かな点において字形が異なっています。これは中国・宋時代に木版印刷が盛んになったために、曲線が多くて彫りにくい楷書体に代わり宋朝体が使用されたことが原因です。宋朝体は明代に明朝体に発展しました。宋朝体・明朝体の特徴は、小さい文字を印刷したときに読みやすく、ほかの文字と区別しやすいように点画を修正していることです。しかし、この修正により手書き文字とは字形が異なってしまいました。明朝体を主とする印刷物が多く出回り日常的に目にするようになると、それが正しい字形として通用するようになりました。

日本の漢字施策に関しては、かの白川静先生も苦言を呈しています。これに関しては後日、機会があればお話ししたいと思います。

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