東京都青梅市の印鑑・はんこ専門店

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2022.03.30

その他

「国字」をご存じですか?

漢字は中国で生まれた文字であることは皆さんご存じですね。それが約2000年前に日本に伝わり今日私たちが使っている漢字となりました。ところで、日本で作り出された漢字があることをご存じでしょうか? それが「国字」と呼ばれる文字です。

国家検定の印章彫刻技能検定試験には、国字に関する問題が出ます。それをアレンジしたものを一つご紹介します。

次の文字のうち、国字が一つだけあります。どれでしょうか。
  イ 畑
  ロ 町
  ハ 略
  ニ 男
(答えは、以下の文章中にあります)

国字」とは、「漢字の要素や作り方を真似して日本で作られた和製漢字」のことです。日本で国字が作られるようになったのは、日本にあって中国大陸にはなかった大和言葉や概念などを表記するためです。日本独特の文化・習慣を表すために、文字を独自に作り出したのです。

もともと漢字には「音読み」しかありませんでした。それは中国語の発音に従ったものでした。そのうちに、日本人が使っている言葉を漢字に当てはめて「訓読み」が出来ました。例えばサンと音読みする象形文字「山」には「やま」、と自分たちが使っている言葉を合わせていきました。

そのうちに漢字には存在しない言葉を表現する必要が出てきました。例えば、神にささげる木を「さかき」というけれど、漢字にはないので「榊」という字を作り出しました。これが国字です。このため国字は一部の例外を除いて「訓読み」しかありません。

このようにして、次々と国字が作られていきました。現在確認されている国字の数は1500字以上ある(一説には数千)と言われています。春夏秋冬の自然や地名、動植物などに関係するものが多く、それらは日本特有の文化から生まれたもので、中国文化との相違を示しています。国字の誕生は7世紀中頃の天智天皇が在位していた飛鳥時代とされています。

日本人の吸収力の強さとそれを応用して発展させる創意工夫のすばらしさを垣間見ることができます。日本人は何とすばらしい民族なのでしょう。

現在学校で習う「常用漢字表」には2136字の漢字がありますが、その中に国字は、小学校で習う「働」「畑」、中学校で習う「込」「峠」「枠」「匂」「栃」「塀」「腺」の9字だけです。(「働」は音読みが存在する数少ない国字の一つ)

しかし、これ以外にも日常生活の中に溶け込んでいる国字がいくつもあります。「鰯」「凧」「笹」「樫」「襷」「辻」などです。室町時代に生み出された「躾」という字には、「身を美しく飾る」という礼儀作法を重んじる日本人のものの見方、価値観が感じられます。中国には「しつけ」に該当する言葉はありません。また「鱈」のように、日本で作られた字が近世になって中国に輸出されて使われるようになった国字もあります。

たくさんの国字を作るなかで、既に中国に同じ形の漢字があることを知らずにそれと同じものを作ってしまうという事も起こりました。この漢字については特に国訓と呼びます。その例は、
・「鮎」…中国ではナマズの意味
・「鮭」…中国ではフグの意味
・「椿」…中国では霊木という意味
・「芝」…中国ではキノコという意味
これらの漢字を中国で使うときは、意味が全く通じないので要注意です。

お寿司屋さんで魚ヘンの漢字がたくさん書いてある湯飲みを見かけたことがあるでしょう。魚ヘンの国字が多いのも日本の文化を表しています。既に出てきた「鱈」「鰯」「鮎」「鮭」のほかに「鰹」「鯱」なども国字です。

国字には風景があると言った人がいるそうです。日本人が豊かな自然の中で生み出した国字を見ながら、その景色を想像してみてください。

最後に、国字のクイズをもう一つ。
次の国字は何と読むでしょう?
「俤」
・・・

答えは「おもかげ」です。おもかげ、という言葉が先にあり、それを表すために作られた国字です。弟は兄に、顔かたちが似ているところから作られたのでしょう。病や戦でなくなった兄のおもかげを弟に見出した親の気持ちから来たのでしょうか。それとも兄弟仲良くしてほしいという親の願いが込められているのでしょうか。いにしえの日本人の心に思いをはせる国字です。

篆刻体験教室で、漢字を見つめ直してみませんか。

参考文献:
『国字の字典』(東京堂出版)
『ビジュアル「国字」字典』(世界文化社)
『月刊現代印章 Vol.597』(ゲンダイ出版)

※国字は、学者によって定義・解釈が異なるので、文献によって国字とされる文字に差異があります。
大原望氏の『和製漢字の辞典2014』には、約3300の国字と国字とされる漢字について、中国にあるかどうかの調査・解説が掲載されています。

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