東京都青梅市の印鑑・はんこ専門店

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2022.05.13

その他

【技能士の事件ノート】契約書に気をつけろ

こんにちは。印章彫刻技能士Hです。
これから一話完結のお話しを始めようと思います。その名は【技能士の事件ノート】。
私がそのとき見聞きした、ハンコに関わる大小さまざまな事件を記録しながら、ハンコの重要性を皆さんにお伝えするお話です。ただし、そのような事件は頻繁に発生するものではないので、不定期にその都度、記録しようと考えています。なお、ここでは文章を読みやすくするためにカタカナでハンコの名称を使います。
(これはあくまでもフィクションであり、実在する個人や団体あるいは事案とは関係ありません。)

今回のお話は「契約書に気をつけろ」です。

令和になって間もなく、ある不動産会社A社が一般企業B社所有の山林を購入することになりました。それは総額2億円になる広大な土地で、A社はこれを宅地造成して大々的に売り出そうとしていたのです。それはA社の社運を賭けたプロジェクトでした。売買に当たっては中間に斡旋業者C社が入り売買契約書を取り交わしました。契約書にはA社とB社の会社実印がしっかりと押されていました。(会社実印とは、会社設立時に法務局に届け出たハンコ(代表取締役印など)のことです。)

売買契約が無事に結ばれて、先方に代金を支払い終えてホッとしたのもつかの間、それからわずか3か月後のことです。A社は購入した土地の開発が許可されないという驚きの報告を受けました。なんとその土地の所有者がC社になっていたのです。A社は慌てて顧問弁護士に相談し、その経緯を調べました。B社からA社に売られた土地が、その契約締結からわずか2か月後にA社からC社に無償で譲渡する別の契約が結ばれているという事が分かりました。もちろんA社は譲渡した覚えは全くありません。代金の2億円が支払われたにも関わらず、土地の所有権が奪われるという前代未聞の事件でした。

A社は顧問弁護士を通じて、C社への譲渡契約書を入手しました。そこにもA社の会社実印がしっかり押されていました。

それを見て、譲渡契約書に何か違和感を感じた顧問弁護士は、知り合いのT印店の印章彫刻技能士Hに依頼しました。この契約書に押されているハンコが本物であるかどうか鑑定してもらえないだろうかと。それは一見したところ同じ印影のようにみえました。しかし技能士Hは、あとから締結された譲渡契約書に押されているA社の会社実印が偽物であることを見破りました。

ハンコはどんなに同じように作ろうとしても、その職人の癖が現れてしまうものです。技能士Hは、そのわずかな違いを見逃しませんでした。彫られている文字の一つひとつを比較検討し、文字の大きさ、余白の取り方、線の太さの変化、線の曲がり具合、隣り合う文字同士の接触状況などを詳細に比較検討した結果、最初に売買契約書に押されていた正規の実印と2か月後の譲渡契約書に押されていた実印が異なる印影であることを見破ったのでした。

A社はすぐにC社を相手取って裁判を起こし、技能士Hが作成した「印影の鑑定結果報告書」を証拠書類として提出しました。報告書には、技能士Hが文字の一つひとつに対して相違点を具体的に指摘してあり、結論として異なる印影であることが明確に示されていました。

裁判の結果は明らかでした。印影が偽造されたものであること、そのため譲渡契約書が無効であることが確定し、A社は2億円を無駄にすることなく、土地の所有権を取り戻すことが出来ました。

皆さん、考えてみてください。もし、ハンコ不要となっていたら、どのようにして契約書が偽物であることを証明できるでしょうか。皆さんの自宅の土地や建物が知らないうちに知らない他人の所有物になっているという事が起こるかもしれません。ハンコが印鑑登録されていて、正しい印影を保証する制度が日本にはあります。それはすばらしい制度と言えるでしょう。

もう一つ、どんなに優れた職人であっても、印影からそれと全く同じ別のハンコを複製することはほぼ不可能であるという事です(詳しくはこちらをご覧ください)。つまりハンコは唯一無二のものであり、非常に信頼性の高いものです。

この様に保証する制度と優れた職人の技、そして国民の信頼があるが故に、ハンコ社会が日本に定着していると言えます。お年寄りでも安心して使うことができる印鑑、今のところこれに代わるものは存在しません。デジタル印影が候補と言われることもありますが、デジタルであるがゆえに複製しやすいという欠点を克服するために大掛かりな仕組みが必要です。その結果、導入には莫大なコストを支払わなけれならないというのが現実です。テレビCMに騙されてはいけません。

この事件は他人事ではありません。機械彫りの三文判は個性が無いので同じ印影のハンコをいくつも作れます。大量生産されている三文判を実印として印鑑登録するといって買いに来られるお客様がたまにいらっしゃいますが、そのお客様に対しては危険性をいつも伝えています。銀行印も同じです。あなたの財産を保管している金庫のカギがどこにでも売られていて誰でも手に入れられるのです。それでは安心して財産を預けることができません。三文判は三文判の用途があり、実印や銀行印とは区別して使う必要があります。

また、実印としてインターネット通販で売られている大量販売の安いハンコは、職人が手彫りしているように見えますが、ほとんどが機械彫りです。

我々、印章彫刻技能士は国家資格に誇りをもっており、複製を受注する事は御座いません。一生ものの実印や銀行印は確かな職人のいる街の印章店で作るのが安全です。お金を払うだけの価値があります。

以上、印章彫刻技能士Hでした。

※これはフィクションです。実在する個人や団体あるいは事案とは関係ありません。

この話に出てきたように当店でも、印影の真偽判断を行い、裁判の証拠資料となる鑑定結果報告書を作成いたします。企業様や弁護士様からのご依頼も承ります。ご相談に応じますので、お気軽にお問い合わせください。

あなたも竹田印店でハンコを作りませんか。お客様のご要望に応じて、最高級の象牙からお手頃な木製まで各種印材を取り揃えております。当店の印章彫刻技能士が手仕上げで制作します。
また当店オリジナルの「武蔵御嶽神社のご祈祷印」は完全手彫りのため偽造されにくいハンコです。

実印・銀行印に関するお問い合せは、 ホームページの「お問い合わせ」、または電話(0428-22-4461)でお気軽にどうぞ。(特別国際種事業者番号:04149)